お知らせ
2026.03.17

無痛分娩について

【無痛分娩公開情報】

●無痛分娩とは
麻酔を用いることで痛みを少なくして行う分娩です。背中の神経をブロックして痛みを軽くする「硬膜外麻酔」または「脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔」という方法が一般的です。
腰部から麻酔を行うことで子宮や産道から伝わる痛みを遮断するため、陣痛・分娩の痛みを効率的に和らげることが可能となります。
いわゆる部分麻酔ですので妊婦さんの意識は保たれた状態ですし、胎児への影響はほとんどありません。

●当院における無痛分娩
 当院では「硬膜外麻酔」で行います。背中からチューブ(カテーテル)を挿入し、痛み止めの局所麻酔薬を注入することで痛みを和らげます。子宮収縮に伴う陣痛の痛みはなくなるわけではありません。痛みの感じ方は人により違いますので、効果の感じ方には個人差があります。
 当院の無痛分娩は原則として前もって出産スケジュールを決めておく「計画無痛分娩」を行います。通常の分娩管理に加えて麻酔管理という特別な業務も加わり、安全性の確保に多くの人員が必要となるためです。夜間や休日は安全性の問題で対応できない場合があります。
自然陣痛が発来してからカテーテルを挿入し麻酔を開始する「オンデマンド型」は原則として行っていません。

●無痛分娩の診療体制と安全対策
1) インフォームド・コンセント
 合併症に関する説明を含む無痛分娩に関する説明書(本説明書)を整備しています。妊婦さんとそのご家族に対して説明書を用いて無痛分娩に関する説明を行い、妊婦さんとそのご家族が署名した無痛分娩の同意書を保存しています。
2) 無痛分娩に関する人員体制
 当院は無痛分娩の麻酔に関する責任者である無痛分娩管理者を配置しています。無痛分娩麻酔管理者は、麻酔科研修経験があり産婦人科専門医の資格を有し、必要な講習会および救急蘇生コースを受講しています。
当院の無痛分娩麻酔担当医は産婦人科専門医の資格を有しています。
3) 無痛分娩に関する安全対策
① 無痛分娩マニュアルを作成し、担当職員への周知徹底を図っています。
② 無痛分娩看護マニュアルを作成し、担当職員への周知徹底を図っています。
③ 施設内で勤務者が参加する危機対応シミュレーション・勉強会を年1回程度実施しています。
4) 無痛分娩に関する設備および医療機器の配置
① 蘇生設備および医療機器、母体用の生体モニターを配置し、すぐに使用できる状態で管理しています。
② 救急用の医薬品を整備し、すぐに使用できる状態で管理しています。

●無痛分娩のメリット・デメリット
1) 主なメリット
① 身体的ストレスと精神的ストレスの緩和:つらい痛みが緩和されることで身体的・精神的ストレスが和らぐことが期待されます。呼吸の負担が減ることで、血圧上昇や過呼吸などを抑えることが期待されます。
② 子宮胎盤循環の改善:母体の余分な力が抜けることで体の緊張が和らぎ、血流が改善し胎児への酸素供給やストレスの改善が期待できます。
③ 産科処置のしやすさ:お母さんが痛みを感じにくくなり力が抜けるので、診察や処置がしやすくなり安全に早く行うことができます。
④ 産後の体力の回復が早い:痛みによる体力の消耗やストレスが軽減されることで、産後の体力を温存できることが期待されます。
2) 主なデメリット
① 分娩遷延:無痛分娩では陣痛も弱まってしまうため分娩経過が長くなることがあります。そのため、子宮収縮薬を用いて陣痛促進を行う頻度が高くなります。
② 吸引分娩・鉗子分娩の増加:無痛分娩では赤ちゃんを生み出す時に自分でいきむ力(陣痛に合わせて自分で腹圧をかける力)が弱くなることがあります。そのため、吸引分娩や鉗子分娩の頻度が高くなります。
③ 血圧低下:無痛分娩開始後に血圧が低下することがあります(麻酔そのものの影響や仰臥位低血圧症候群など)。その場合は点滴量を増やしたり、血圧を上げる薬を使用する場合があります。
④ 麻酔薬の副作用:頭痛やアレルギー反応などが起こることがあります。まれに麻酔薬の中毒症状がでることがあります。
⑤ 硬膜外麻酔の副作用:一時的な腰痛や下肢の神経障害、排尿障害などを認めることがあります。ただし通常分娩でも認めることがあります。
⑥ 胎児心拍の変化:無痛分娩の進行中に胎児心拍数図で異常を示すことがあります。その場合に緊急帝王切開を行うことがあります。

●硬膜外麻酔の合併症
1) 硬膜穿刺:カテーテル挿入の際に針やカテーテルが硬膜を貫いて穴ができてしまうことがあります。自然に閉鎖しますが、脊髄液が漏れて頭痛や吐き気が出たりします。麻酔薬がくも膜下腔に入ることで、上半身まで麻酔が広がり呼吸が苦しくなったりする場合があります。慎重に穿刺を行いますがそれでも発生することがあります。
2) 局所麻酔中毒:カテーテルが血管内に入ってしまった状態で麻酔薬が注入されると血液中の麻酔薬の濃度が上昇して症状が起こります。初期症状として舌の痺れ、興奮、血圧症状、過呼吸、痙攣など、さらに意識消失、呼吸停止、循環抑制などが起こります。注入前に血液逆流がないことを確認し、麻酔薬をゆっくりと注入することが予防につながります。
3) 神経障害など:穿刺針による穿刺部の痛みがあります。さらに神経の分布に沿った痛み、感覚の麻痺などの神経根症状があります。その他にも痺れや痛み、感覚鈍麻などが残ることがごく稀にあります。
4) 硬膜外血腫・膿瘍:針やカテーテルを操作する際に硬膜外腔に血液や膿が貯留すること(血腫や膿瘍)が起こることがあります。
5) アナフィラキシー:麻酔薬に対する強いアレルギー反応により、気道のむくみによる呼吸障害や湿疹などが起こることがあります。

●計画分娩・分娩誘発について
 陣痛誘発は、「診療ガイドライン産科編」に従って、胎児心拍数や子宮収縮を連続モニターし安全性に十分配慮して行います。
 できるだけ自然に近い経腟分娩を目指します。
しかし、母体と胎児の状況により帝王切開に切り換えることもあります。
1) 器械的な方法:子宮口が閉じている場合や子宮頸管が硬い場合(熟化不全)には、ラミナリア(スポンジのように膨張する素材)やメトロイリンテル(水風船)を子宮頸管に挿入して拡張や熟化を行います。
2) 子宮収縮薬による方法:子宮収縮作用のあるホルモン(オキシトシン)を使用して陣痛誘発を行います。輸液ポンプを用いて厳密に調節しながら、少ない量から開始して有効な陣痛が得られるまで30分毎に増量します。

●誘発・無痛分娩の流れ
入院当日
1) 9:00入院。2階ナースステーションで受付します。事前に説明・お預けしている「無痛分娩同意書」と「陣痛誘発同意書」をお預かりします。
2) 胎児心拍数陣痛図で胎児の状態を確認します。
3) 母体のバイタルサイン(体温・血圧・脈拍など)をチェックし、点滴を開始します。
4) LDR室で硬膜外麻酔のカテーテルを挿入します。
5) LDR室で陣痛誘発を開始します。
6) 16時前後に分娩の進行状況を判断し、誘発を継続するか誘発を終了するかを決定します。
(1)誘発を継続した場合は、分娩までLDR室で管理します。
(2)誘発を終了した後も自然の陣痛が継続する場合は、LDR室で経過を看ます。
(3)誘発を終了した後に陣痛が遠のいた場合は、胎児心拍異常がなければ自室にもどります。夜間に自然の陣痛が開始することもあります。
 *硬膜外麻酔カテーテルは、分娩終了まで留置したままで生活できます。
 *分娩管理中に胎児心拍異常が出現した場合(胎児機能不全)や陣痛が十分にあるのに進行しない場合(分娩停止)には、緊急帝王切開を行う場合があります。

入院2日目
1) 分娩にならずに2日目朝を迎えた場合は、9時に診察し再度分娩誘発を行います。
2) 16時前後に分娩の進行状況を判断し、誘発を継続するか誘発を終了するかを決定します。その後は1日目の方針と同様です。

入院3日目
3) 分娩にならずに3日目朝を迎えた場合は、9時に診察し再度分娩誘発を行います。
4) 16時前後に分娩の進行状況を判断し、分娩停止の診断により帝王切開を行うことを含めてその後の方針を相談・決定します。